日産 フェアレディZは1969年に初代 S30型を発売以降、日産のみならず日本を代表する本格FRスポーツカーとして、世界中で愛されてきました。
2008年に6代目モデルが販売されて以降、10年以上大きな改良が行われず、ほったらかしのような状況になっていましたので、満を期してのリニューアルとなります。
フルモデルチェンジ並の変わり様です。
今回、日産グローバル本社ギャラリーにて新型フェアレディZ Version ST(9ATモデル)をじっくり見学、試乗することができたので、
・グレード、スペックの解説
・試乗して感じたこと
以上について、触れていきたいと思います。
グレードとスペックについて
・ボディサイズ:全長4380mm×全幅1845mm×全高1315mm
・エンジン:3.0ℓ V6ツインターボ(VR30DDTT型)
・最大出力:298kW(405PS)
・最大トルク:475N・m(48.4kgf・m)
・燃費:9.5km/L(6MT)~10.2km/L(9AT)
マイナーチェンジ前は自然吸気エンジンだったのに対し、本モデルではターボエンジンを採用しているため、出力、トルク共に大幅に向上しています。
グレードは、
・エントリーグレードの「フェアレディZ 」
・走行性能重視の「フェアレディZ Version S」
・インテリア、快適性能重視の「フェアレディZ Version T」
・両取りの最上位グレード「フェアレディZ Version ST」
4種類が用意されています。
また、2023年8月には特別モデル「フェアレディZ NISMO」が新たに追加されました。
「フェアレディZ NISMO」は
・エンジン出力の向上(最大出力:309kW(420PS) 最大トルク:520Nm(53.0kgfm)
・9ATのレスポンス、耐久性の向上
・ステアリング、ボディのねじり剛性の強化
・NISMO専用エクステリアデザインの採用
といったNISMO専用チューニングが施されたグレードとなっています。
もはや別の車といってもいいかもしれません。
なお「フェアレディZ NISMO」は納車待ちの方からの振替注文のみでの販売となっています。
試乗レビュー
驚くほど静かでびっくり
出典:日産自動車株式会社
今回のマイナーチェンジで吸遮音材を追加し、遮音性の高いフロントガラスを採用した効果もあり、外部からのノイズの侵入を大幅に抑えられています。※全モデルと比較して騒音レベル50%低減を実現したとのこと。
また試乗した車両は「アクティブ・ノイズ・コントロール」を標準装備しており、不快なノイズに対して、スピーカーから逆位相の制御音を出力することによって、さらに静粛性を高めています。
ノイズキャンセリングイヤホンの仕組みを車内で再現しています。
前後19インチでスポーツタイヤの「ポテンザS007A」というロードノイズが発生しやすい環境でも、うるさいと感じる場面は一切ありませんでした。
裏を返すと、マフラーやエンジンから出るノイズまでシャットアウトしてしまうので、
そういった音を楽しみたい方は、アクティブ・サウンド・コントロール、アクティブ・ノイズ・コントロールを標準装備しているグレードを選ぶか、メーカーオプションで装着したほうが満足度が高いと思います。
アクティブ・サウンド・コントロールはエンジン回転数やドライブモードに応じた音をスピーカーから出すことで、エンジンサウンドの音量と音質を高めてくれます。
官能的なエンジンフィールとサウンド
出典:日産自動車株式会社
今回のマイナーチェンジで3.0L V6ツインターボエンジンに変更となりましたが、心配していたターボラグを一切感じず、「ほんとにターボエンジンなのか?」と脳が誤認しかけました。
ターボを採用した効果は大きく、どの速度域からもシートに押し付けられるような強烈な加速力を発揮してくれます。
何よりもエンジンサウンドが素晴らしい。重厚感がありつつも軽やかさも感じる独特なエンジンサウンドは病みつきになります。
乗り心地は穏やかで快適
出典:日産自動車株式会社
乗り心地は非常に穏やかだなと感じました。
著者が乗っているRX-8よりも、明らかに足回りの柔らかさを感じます。
今回の試乗では、不快な揺れやきしみ等を感じることは一切無く、まるで高級セダンに乗っているかのような快適さを感じることができました。
シートも座りやすく、ナビ周りもスポーツモデルとは思えないほど良く出来ています。
ダイヤル式のコントローラーは運転中も操作しやすい。
同乗したスタッフの方は、「この車は年配の方が長時間運転しても疲れないようにできています。」と話されていましたが、その通りだと思います。
ロングドライブにはもってこいの車ですね!
新開発「9AT」は燃費走行にもスポーツ走行にも効果絶大
出典:日産自動車株式会社
前モデルの7速から9速に多段化された効果は大きいです。
80km程度の巡航速度では、2000rpmを超えることはまずありません。(しかも8速以上になかなか入らない。)
郊外路や高速道路を巡航するシチュエーションでの燃費性能は良さそうです。
諸元表を見ると、郊外路と高速道路での燃費性能は10.9~12.6Km/Lと記載されており、かなり頑張っているなと感じます。
自然吸気の86、BRZ(12.8~15Km/L)といい勝負ができそうです。
もちろん、走りの性能も妥協は一切なく、ドライブモードを「SPORT」に切り替えると、キャラクターが激変します。
エンジン回転数を高めに保ち、エンジン、トランスミッションのレスポンスを高める制御をしてくれるので、MT車に乗っているような高揚感をしっかりと感じることができます。(これが結構重要!ダメなATは制御が甘く退屈なので)
6MT車も用意されていますが、普段からMT車に乗っている著者でも、購入するなら9AT車だと思いました。
上記は6MTモデル。シフトストローク感が長く、加飾もシンプルすぎかなと思いました。
まとめ
今回は新型フェアレディZのグレードやスペック、試乗して感じたことをレビューしてきました。
試乗してみて、静粛性を含めた快適性能の劇的な向上に驚かされました。
今回のマイナーチェンジでスポーツカーとしてのデザインや走行性能を高めつつも、フェアレディZが持っている「GTカー」としての良さが伸びたのかなと感じます。
一方で、生産能力不足により、納期の長期化が深刻で、注文から納車まで2~3年かかるとの話も出ています。
はっきり言って、いい車を出しても買えなければ意味はないので、日産自動車には納期短縮に向けて頑張っていただければと思います。