著者は今回、デリカ:D5の2.4L ガソリンモデルを購入する機会に恵まれました。
デリカ:D5は、広い室内空間とスライドドアを備えたミニバンでありながら、ダカールラリーのサポートを担った実績を持つ、悪路走破性に優れた車として有名です。
出典:【三菱 デリカD:5 発表】ダカールラリー完走のポテンシャル
しかしながら、デリカ:D5のレビュー記事の大部分は、ディーゼルモデルに関するものであり、ガソリンモデルに関する解説は非常に少ないです。
そこで今回は、
・ディーゼルモデルとの違いとは?
・ガソリンモデルの良い点、注意点とは?
以上の点について、レビューしていきたいと思います。
デリカD:5とは?
デリカ:D5は三菱自動車工業が製造・販売を手掛けるミニバン型乗用車です。
デリカシリーズは、1968年にキャブオーバートラック「デリカ」を元祖とする三菱自動車にとって、歴史ある車です。
初代:デリカコーチ 今日まで続くデリカシリーズの源流となった。
出典:初代から五代目D:5まで───三菱デリカ50年の歩みを振り返る
現在販売されてモデルは5代目であり、「D:5」とは5代目のデリカであることを示しています。
2007年の販売開始以降、安定した販売台数を誇っており、三菱自動車の収益の柱となっています。
2019年のビックマイナーチェンジの際に、ガソリンモデルが廃止されディーゼルモデルのみの販売となりました。
主なガソリンモデルとディーゼルモデルの違いとは?
エンジン性能の違い
以下の表で、エンジン性能を比較していきます。
2.0L ガソリン 2WD | 2.4L ガソリン 4WD | 2.2L ディーゼルターボ 4WD | |
---|---|---|---|
エンジン※1 | 4J11 直列4気筒 SOHC 16バルブ | 4B12 直列4気筒 DOHC 16バルブ | 4N14 直列4気筒 DOHC 16バルブ |
総排気量 | 1998cc | 2359cc | 2267cc |
使用燃料 | レギュラー | レギュラー | 軽油 |
最高出力※1 | 150 PS/6,000 rpm | 170 PS/6,000 rpm | 145 PS/3,500 rpm |
最大トルク※1 | 19.4 kgf•m/4,200 rpm | 23.0 kgf•m/4,100 rpm | 38.7 kgf•m/2,000 rpm |
トルクウェイトレシオ※2 | 87.1 | 78.2 | 51.1 |
※2 各モデルの最大車両重量値で計算。数字が低いほど加速性能に優れる。
ガソリンモデルとの大きな違いは、ディーゼルモデルの最大トルクが2倍以上大きく、より低回転域で発生する点です。さらに、トルクウェイトレシオもディーゼルモデルが優れています。
燃費性能の違い
次に燃費性能を比較していきます。
2.0L ガソリン 2WD | 2.4L ガソリン 4WD | 2.2L ディーゼルターボ 4WD | |
---|---|---|---|
燃費性能 (JC08モード) | 13.0km/L | 10.6km/L | 13.6km/L |
ディーゼルモデルもガソリンモデルも燃費性能は良くはないです。しかし、ディーゼルモデルについては燃料が軽油なので単価が安く、ガソリンモデルと比べて優位性があります。
デリカ:D5 ガソリンモデルの良い点とは?
ここからは、筆者が感じたガソリンモデルの良い点について述べていきたいと思います。
エンジン音が静かで、耐久性も十分
1つ目に感じたことは、ディーゼルモデルと比べて、静エンジン音が静かで、耐久性も十分だということです。
ディーゼルエンジンは構造上、特有の「ガラガラ音」が発生してしまう特性があり、特に4N14型は他社製と比べると、音が大きめです。
4N14型コモンレール式DI-Dクリーンディーゼルエンジン
出典:三菱『歴代デリカのすべて 連載第5回』D:5の「D」は「DELICA」の「D」!「5」は五代目の「5」!
マイナーチェンジ後は、遮音材、静音材のおかげで車内は静かですが、車外ではトラックのようなアイドリング音が響き渡ります。
はっきり言って、早朝や深夜の駐車場では近所迷惑になると思います。
一方で、ガソリンモデルの4J11、4B12型は、4N14型よりもエンジン音を抑え込んである上に、気になるノイズも少ないので、住宅密集地の駐車場でも気にすることなくエンジンを掛けられます。
4B12型2.4リッター直列4気筒DOHC16バルブMIVECエンジン
出典:三菱『歴代デリカのすべて 連載第5回』D:5の「D」は「DELICA」の「D」!「5」は五代目の「5」!
エンジンの耐久性も優れており、著者が購入した2.4L ガソリン車の走行距離は15万キロを超えていますがオイル漏れ、にじみ等の問題は一切ありません。
定期的なオイルメンテナンスさえ行っていれば、20万キロ以上の走行にも余裕で対応できると思います。
CVTがもたらす滑らかな走りがいい
2つ目に感じたことはCVTの制御が作り込まれており、発進、加速といった場面でギクシャクすることがなく、スムーズな走りを体感できたことです。
ジヤトコ 製6速CVT
出典:ジヤトコ、中型FF車用ベルトCVT(JF011E)の生産累計500万台を達成
発進時にガクガクするようなことはありませんし、加速時も変速ショックがなく、車体が揺れることがないため、長距離を走っても酔いにくいと感じました。
一部のCVT車に見られるようなラバーバンドフィール(加速時、エンジン回転数だけ上昇し、車速が乗ってこない現象)は最小限に抑えているため、ストレスなく運転を楽しむことができます。
一方で、ディーゼルモデルは大トルクを受け止めるため、トルコン式ATを採用しています。
マイナーチェンジ後のトルコン式8速ATも従来のものと比べれば、変速ショック等は少なく進化したとは思いますが、CVTのようなスムーズさとまではいかないのが現状です。
エンジンオイル交換等のランニングコストが安い
3つ目に感じたことは、エンジンオイル交換のランニングコストがディーゼルモデルに比べて安いということです。
2.0L ガソリン 2WD | 2.4L ガソリン 4WD | 2.2L ディーゼルターボ 4WD | |
---|---|---|---|
オイル 容量 | 約4.3L | 約4.6L | 約5.9L |
オイル 規格 | SN/GF-5 | SN/GF-5 | DL-1 |
SAE粘度 | 0W-20 5W-30 10W-30 | 0W-20 5W-30 10W-30 | 0W-30 5W-30 |
ガソリンモデルのオイル容量は4.3L~4.6Lに対し、ディーゼルエンジンは5.9Lの交換が必要です。
また、ディーゼルエンジンは軽油を燃焼させる構造上、煤の発生量が多いため、エンジンオイルの劣化が早く、ガソリンエンジンよりも交換サイクルは短めのほうがよいとされています。
またマイナーチェンジ後のディーゼルモデルは、排ガス浄化のために尿素SCRシステムを使用しており、定期的なAdBlue(尿素水)の補充が必要です。
したがって、1回あたりのオイル交換量が少なく交換サイクルが比較的長いガソリンモデルは、ディーゼルモデルと比べるとランニングコストが低いといえます。
デリカ:D5 ガソリンモデルの注意点とは?
ここからはガソリンモデルのイマイチな点、注意点を述べていきたいと思います。
トレーラー、ボート等の牽引はできない
デリカといえば、キャンプ等のアウトドアシーンで使われる車なので、牽引も当然できるだろうと考えている方が多いと思います。
しかし、ガソリンモデルについては、2.0L、2.4L共に必基本的には牽引はできません。
変速機にCVTを採用しているので、長時間の高負荷に弱く、無理やり牽引を行うと最悪の場合、CVTが破損します。
デリカ:D5の故障事例として、CVT故障はよく挙がります。
一方、ディーゼルモデルはトルコン式ATを採用しているため耐久性が高く、公式でも「750kgまでの牽引は可能」とのアナウンスされています。
アイシン・エィ・ダブリュ製8速AT
ディーゼルエンジンの高トルクに対応している。
出典:雲泥の差とはこのこと。乗ってすぐわかる、三菱新型デリカD:5の進化!(雪上で)
牽引に限らず、ルーフテントを設置したいといった重量物を常時積載する使用が想定されるなら、迷わずディーゼルモデルを選ぶべきです。
高負荷時の燃費低下が激しい
ガソリンモデルについては、登坂時や重量物を運んでいる際の燃費低下が激しいです。
というのも、ガソリンモデルの最大トルク発生回転数は4000rpm付近となっており、登坂時や重量物を積載している場合、その回転数に達するまでなかなか車が加速してくれず、アクセルを開ける時間がどうしても長くなってしまうからです。
一方で、ディーゼルモデルはトルクが強大な上に、2000rpm付近で最大トルクが発生してくれるので、アクセルを開けなくてもスッと加速してくれるため、高負荷時でも燃費低下が最小限です。
著者のガソリンモデル車も一般道を走行する際は10km/L程度の燃費を計測しますが、高負荷時では6~8km/Lまで低下してしまいます。
まとめ
今回はデリカ:D5のガソリンモデルの良い点、注意点について、実際に使用して感じたことを踏まえてレビューしました。
デリカ:D5のガソリンモデルは、ディーゼルモデルと比べて中古価格も安く、悪路走破性の良さも確保されているので、個人的にはオススメだと思っています。
皆様の車選びの参考になれば幸いです。