出典:マツダ株式会社
マツダは、2023年9月14日にロータリーエンジンを搭載したPHEVモデル「MX-30 Rotary-EV」の予約を開始したと発表しました。
ロータリーエンジンはマツダのみが量産に成功し、コスモスポーツやRX-7といった数々の名車に搭載され、ルマン24時間耐久レースでもレシプロエンジン車以外で唯一の優勝を果たすなど、自動車史に名を残してきたエンジンです。
マツダ RX-8生産終了以来、ロータリーエンジン搭載車がラインナップに存在しない状況が続いていましたが、約10年ぶりの復活となります。
復活させてくれたマツダには感謝です。
一方で、復活したロータリーエンジンは動力源としてではなく、モーターを動かすための発電機としての役割を果たしています。
そこで今回は、
・MX-30 Rotary-EVの特徴
・グレードとスペックについて
・MX-30 Rotary-EVの良い点、イマイチな点
以上について、解説していきたいと思います。
MX-30 Rotary-EVのグレードとスペック
・ボディサイズ:全長4395mm×全幅1795mm×全高1595mm
・エンジン&モーター:830cc水冷1ローター(8C-PH型)・交流同期電動機(MV型)
・最大出力:125Kw(170PS)
・最大トルク:260N・m(26.5kgf・m)
・燃費:15.4km/L
・EV走行換算距離:107km
「PHEV」はバッテリーとモーター、エンジンを搭載することでガソリンと電気の2種類のエネルギーに対応するシステムです。
そのため、部品点数が多く大型の車種に採用されるケースが多いですが、MX-30 Rotary-EVは全幅1800mm以下でPHEVを実現しています。
EV走行距離も107Kmを達成するなど、国産PHEV車の中でもトップクラスの性能を実現しています。
高負荷時、高速走行時にエンジン駆動を利用してモーターアシストを行うPHEV車(アウトランダーPHEVなど)が多いですが、本モデルは全領域をモーターのみで駆動します。
日産の「e-POWERシステム」と似たような仕組みですね。
グレードは、
・エントリーグレード「Rotary-EV」
・インテリア、快適性能を強化したグレード
「Industrial Classic」「Modern Confidence」「Natural Monotone」
・「Natural Monotone」をベースに専用ボディカラー、装飾を加えた特別仕様車「Edition R」
が用意されています。
レード間の走行性能の違いはなく、インテリアや快適装備の違いのみとなります。
「Edition R」は専用のインテリアが魅力ですが、ボディカラーが1種類のみなので、選ばせてほしいかなと思いました。
MX-30 Rotary-EVの特徴
発電機としてロータリーエンジンを搭載し、ロングドライブ性能を強化
出典:
マツダのロータリーエンジン、なぜいま復活!? 「8C型ロータリー」を理解するための3つのヒント 6枚目の写真・画像
バッテリーとモーターのみで走行を行うEV車は、航続距離に難があり、性能が良いEV車でも500kmまでが限界です。(気温が低いと航続距離はさらに短くなります。)
MX-30 Rotary-EVはバッテリーだけなく発電用のエンジンを装備しているので、EV車の欠点である航続距離の短さの問題を解決しています。
また、採用しているロータリーエンジンは一般的なレシプロエンジンと異なり、軽量コンパクトで省スペース性に優れます。
そのため、大型PHEV車と同等レベルの「50L」の燃料タンク容量を確保することができ、PHEV車の長所をさらに引き出してくれています。
MX-30 Rotary-EVはバッテリー走行分も合わせると、実に800Km以上の長距離走行が可能です。
高出力モーターを採用し、走行性能を強化
出典:待望のロータリーエンジン搭載、マツダ『MX-30 ロータリーEV』予約開始 423万5000円から
省スペース性に優れるロータリーエンジンを採用することで、MX-30 EVモデル 107Kwを上回る、125kWの最高出力を発生するモーターを搭載することを可能にしています。
モーターならではの滑らかで、低速トルク性能に優れた力強い走りをより強化することが出来ています。
PHEV車は、重量物の駆動用バッテリーを車両下部に配置するレイアウトを取ることで重心を低くすることができるので、ふらつきに強い走りが可能です。
最大1,500Wに対応するAC出力に対応し、消費電力の大きい電化製品にも対応
出典:マツダ株式会社
MX-30 Rotary-EVはAC外部出力にも対応しており、最大1500Wの電力を取り出すことができます。
電子レンジなどの大型家電の出力にも対応することができるので、非常に便利です。
ガソリンを満タンにしておけば、一般家庭電力使用量の約9日分の電力を賄うことが可能なので、災害時やアウトドアシーンでは電源供給源としての利用が可能です。
ロータリーエンジンは構造上、往復運動がなく吸排気バルブも持たないので、静かな環境でメリットを感じるかも?
MX-30 Rotary-EVの評価は?
MX-30 Rotary-EVの良い点
小型の車体でPHEVを実現し、街乗りにも向いている。
アウトランダーPHEVやRAV4 PHEVといった大型の車種に採用されることが多いPHEV車が多い中で、MX-30 Rotary-EVのサイズ感は魅力的です。
MX-30 Rotary-EVは全長4395mmと短めで、全幅も1800mmを下回るサイズなので、首都圏などの交通量が多い道や市街地などの狭い道などでも、緊張することなく走れそうです。
室内空間を犠牲にせず、居住性を確保。
PHEV車は、部品点数が多い関係から定員数や室内空間に制約が生じる場合が多いですが、MX-30 Rotary-EVはガソリンモデルやEVモデルのMX-30とほぼ変わらない室内空間となっています。
旧型の三菱 アウトランダーではガソリン車は7人乗りを選択できましたが、PHEVモデルは5人乗りのみしか設定されていませんでした。
このあたりは、省スペース性に優れるロータリーエンジンのメリットがしっかり活かされているなと感じます。
MX-30 Rotary-EVのイマイチな点
燃費性能はレシプロエンジン車のPHEV車と比べると見劣りする
RX-8等に採用された「13B型」と比べて、新開発された「8C型」はサイドハウジングをアルミ製としたり、ロータリーエンジン初の直噴エンジン化するなどして、効率を高めています。
ですが、それでもレシプロエンジン車のPHEV車と比べると燃費性能は見劣りします。
諸元表を見てみると、市街地モード燃費が11.4Km/Lと大きく足を引っ張っており、全体の燃費性能を押し下げているようです。
8C型ロータリーエンジンの耐久性が未知数
ロータリーエンジンは構造上、エンジンオイルへの負担が大きく、点火プラグの消耗が早いです。
ロータリーエンジンの構造については、以下の記事でも触れています。
PHEV車に搭載されるエンジンは常に動いているのではなく始動と停止を繰り返すので、一般的なエンジン車よりも負荷が大きいと言われています。
もちろんマツダでも、入念なテストを繰り返して「8C型」を搭載することになったとは思いますが、耐久性については乗ってみないと分からないのが現状です。
4WDモデルがない(FF車のみ)
著者が一番に感じた不満点はこれです。
PHEV車を購入する客層には、「雪国でも安心してEVを体験したい」、「アウトドア、災害時でも電源車として活用したい」と考える方が多いはずです。
にも関わらず、4WDの設定がないのはそういった客層の声を無視していることになり、どのように売り込みたいのか分からないというのが正直な感想です。
まとめ
今回はマツダ MX-30 Rotary-EVの特徴やグレード、スペック等について解説しました。
著者としては、新型のロータリーエンジン搭載モデルが復活するとは思っていなかったので、久々に胸が熱くなる思いを感じました。
一方で、PHEV車としての能力だけをフォーカスしてみると、三菱のアウトランダーPHEVといった完成度の高い車両を比較してしまうと、燃費性能等では競争力は弱いのかなと思います。
ロータリーエンジンの生産技術を次の世代に継承するために、意地で作った所もあるかもしれません。
ロータリーエンジンの良さがどのように生かされているのか、今後もチェックしていきたいと思います。